はじめに:災害は「暑さ」とも闘う時代に
地震や水害などの災害時、避難所生活は避けられない現実です。ところが、夏場の避難所では、もうひとつの命の脅威――それが**「熱中症」**です。
とくに、気温が上がる6月~9月の避難所では、風通しが悪く、エアコンや扇風機の使用が制限される場合もあります。
この記事では、「防災×避難所での熱中症対策」として、避難生活を少しでも安全かつ快適に乗り切るための備えと工夫をお伝えします。
第1章:避難所でなぜ熱中症が多発するのか?
1-1. 熱中症とは?
熱中症は、「体温の上昇」と「水分・塩分の不足」によって、体温調節が効かなくなる状態です。軽症であればめまいや立ちくらみ、中等症では頭痛や吐き気、重症になると意識障害や命にかかわることも。
1-2. 避難所でのリスク要因
• 空調がない、または不十分
• 人口密度が高く、換気しづらい
• 高齢者や障がい者が多く、体温調整が困難
• 水分や塩分の補給が不十分
• プライバシー確保のためにテントや仕切りで空気がこもる
第2章:熱中症から身を守る!避難所でできる5つの基本対策
2-1. こまめな水分と塩分補給
• 水だけでなく経口補水液・スポーツドリンクも活用
• 高齢者には「のどが渇いたら」では遅い。時間を決めて摂取を促す
• 熱中症予防ゼリーや塩分タブレットの備蓄も有効
2-2. 室内の温度・湿度管理
• 可能な限りエアコンや扇風機の活用
• 扇風機がない場合でもうちわやハンディファンの活用
• 温度計・湿度計で可視化して注意喚起
• 打ち水や濡れタオルの活用も
2-3. 通気と空気の流れを意識する
• 仕切りやテントの配置は風通しを考慮
• 段ボールベッドの高さ調整で床からの熱気を避ける
• 定期的に窓を開ける時間を設けるなど換気のルール化
2-4. 服装と体調管理の工夫
• 吸汗・速乾素材の衣類を着用
• 首元や脇を冷やす冷却グッズの使用
• 発熱や脱力感がある場合は医療チームに相談を
2-5. 避難所内での情報共有
• 熱中症予防のポスター掲示
• 朝夕の体調確認チェックリスト
• 「暑さ指数(WBGT)」の掲示や放送による注意喚起
第3章:家庭でできる熱中症対策グッズの備蓄
災害時、避難所の備蓄だけでは不足しがち。家庭でも以下のような暑さ対策グッズの備えをしておきましょう。
グッズ名・用途・ポイント
経口補水液・粉末
水分と電解質をすぐに補給できる
保冷剤・冷却スカーフ
首元や脇の下を冷やすことで体温上昇を抑える
ハンディファン
自家発電型や乾電池式がおすすめ
アルミシート
熱の遮断・冷気保持に有効
濡らして使うタオル
気化熱を利用して体温を下げる
第4章:高齢者・子ども・障がい者への特別な配慮
避難所では、体温調整が難しい「要配慮者」への対策が極めて重要です。
4-1. 高齢者
• 自覚症状が出にくい → 周囲の声かけと水分促し
• 通気性の良い服装を準備
4-2. 子ども
• 活発に動きすぎて脱水しやすい
• 日陰や涼しい場所の確保
• 遊びの時間後は必ず水分補給
4-3. 障がい者・要介護者
• 自分で水分補給ができない方は介助が必要
• 排泄・着替えなどにも人手を確保
• 周囲が暑さへの変化に敏感になることが大切
第5章:行政・自治体・自主防災組織の役割とは
5-1. 行政の備え
• 熱中症予防物資(扇風機・塩飴など)の事前配備
• 避難所運営マニュアルに熱中症対策を明記
• 熱中症リーダー(ボランティア)制度の導入
5-2. 自主防災組織の活躍
• 地域の高齢者や要支援者の把握
• 暑さ対策ワークショップや訓練の実施
• 熱中症情報の共有や周知活動
おわりに:暑さは「防げる災害」
熱中症は、地震や豪雨と違って**「備えで防げる災害」**です。
避難所での命を守るために、日ごろからの意識と準備が何よりも大切です。
「暑さへの備え」も、あなたの大切な防災対策のひとつに加えてみてください。
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